今回紹介するのは、原作を江戸川乱歩、脚色と作画を丸尾末広が手掛ける漫画『芋虫』です。
1巻完結で読みやすく、昭和エログロナンセンスやアングラ好きの方必見の1冊です。
作家プロフィール
江戸川乱歩
本名・平井太郎。1894年10月21日、三重県名張市に生まれる。早稲田大学卒業後、貿易会社や古本屋等、様々な職歴を経る。1923年に雑誌『新青年』にて「二銭銅貨」を発表し、小説家デビューする。ペンネームの江戸川乱歩はエドガー・アラン・ポーからきている。推理小説を得意とし、『怪人十二面相』や『人間椅子』、『心理試験』、『D坂の殺人事件』『人でなしの恋』等、数々の作品を残す。1965年7月28日、死去。
丸尾末広
1956年1月28日、長崎県に生まれる。少年期に『少年キング』や『少年マガジン』に影響を受け、漫画家を目指す。著作に『少女椿』や『犬神博士』、『パノラマ島綺談』、『国立少年』、『笑う吸血鬼』等がある。イラストレーターとしても活躍し、装画やCDジャケットも手掛ける。
芋虫 概要
原作 江戸川乱歩
脚色・作画 丸尾末広
発行所 株式会社エンターブレイン
発売元 株式会社KADOKAWA
初版初刷発行 2009年11月6日
ジャンル コミック(昭和エログロナンセンス、アンダーグラウンド、サブカルチャー、ホラー、ミステリー)
芋虫 登場人物
須永時子
主人公。夫である須永中尉が傷痍軍人となり帰還して以降、真摯に夫の世話をする。一方で体の不自由な夫の存在を厭わしく思っており、夫を虐げる面もある。
須永中尉
時子の夫。かつては大手柄を立てた軍人であったが、シベリア出兵の際に傷痍軍人となり帰還する。日本で唯一の武人勲章である金鵄勲章を授与されている。
鷲尾
須永中尉の上長官。須永夫妻に離れの家を無料で貸し、生活を援助している。
芋虫 あらすじ
かつて英雄と称された須永中尉は、シベリア出兵で傷痍軍人となり帰還する。大怪我を負いながらも奇跡的に命を取り留めたが、四肢は付け根から切断され、顔は焼け爛れ、話すことも聞くこともできない。残されているのは視覚と触覚だけ。その姿はまるで「芋虫」のようであった。誰もが気味悪がる容姿をした彼の世話は、妻である時子がしなければならなかった。
自身の栄光を示す新聞記事と金鵄勲章を眺めることを慰みとする夫。夫の世話を真摯にする妻。世間から「美談」と称されている夫婦であるが、実際には互いに肉慾を満たすことに溺れる生活を送っていた。しかし時子は夫の体を弄びながらも、そのグロテスクな肉体や日々の世話の負担から厭わしさを積もらせていた。
ある日、時子は自らの手で夫の両目を潰してしまう。ただでさえ体が不自由な夫の視界さえも奪ってしまった罪の意識から、時子は夫の体に「ユルシテ」と指で書き許しを請う。しかし時子が鷲尾のもとへ外出している間に、夫は失踪する。時子が鷲尾を連れ家に戻ると、襖に「ユルス」と夫の字を発見する。すぐに時子と鷲尾は捜索するも、夫が古井戸へ投身自殺する光景を目の当たりにしてしまう。それは芋虫が暗闇へ落ちていくようであった。